コートに立つ前から勝負は始まっている
「次の試合、対戦相手がどんな人か分からない…」
こんな不安、ありませんか?
実は、試合前に相手を観察するだけで、勝率は大きく変わります。
「相手のプレーを観る力」は、最強の戦術です。
なぜなら、コートに立つ前から、戦略を立てられるからです。
前回の第32話では、練習仲間の試合を観る技術を学びました。
今回は、対戦相手を観る技術を解説します。
試合前・試合中に「観察眼」で相手を読むためのスカウティング術を紹介します。
観戦で相手を読む目的は”予測”ではなく”傾向”
相手の「得点パターン」と「エラーの原因」を見抜く
対戦相手を観察する時、多くの人はこう考えます。
「相手は、どんなショットを打ってくるか予測しよう」
でも、これは難しいです。
なぜなら、試合中、相手も状況に応じて変化するからです。
では、何を観るべきか?
「傾向」です。
- 相手は、どういう時に得点を取るのか
- 相手は、どういう時にミスをするのか
このパターン(傾向)を掴むことが、スカウティングの目的です。
具体例:得点パターンの観察
観察
- 対戦相手の試合を観る
- 相手が得点を取った場面を記録する
パターンの発見
- サーブ→リターンが浅い→3球目で攻撃
- クロスラリー→相手のミス
- ネットに詰めて→ボレーで決める
傾向の理解
「この相手は、3球目で攻めるパターンが多い」
「リターンを深く返せば、攻撃させないかもしれない」
このように、得点パターンを見抜くことで、対策が立てられます。
第28話「中上級者のシングルス戦術」で学んだように、上級者は「パターン」で攻めます。相手のパターンを事前に知ることが、勝利の鍵です。
具体例:エラーの原因の観察
観察
- 対戦相手の試合を観る
- 相手がミスをした場面を記録する
パターンの発見
- バックハンドのミスが多い
- 高い打点で打つ時、ミスが増える
- ネットプレーで、ローボレーをミスする
傾向の理解
「この相手は、バックハンドが弱い」
「高いボール(トップスピン)を打てば、ミスを誘えるかもしれない」
このように、エラーの原因を見抜くことで、攻め方が分かります。
第27話「初中級者のシングルス戦術」で学んだように、相手の弱点を突くことが基本戦術です。
“クセ”を探す:体の向き・リターン位置・タイミング
相手のクセを見抜くことも、重要です。
クセとは、無意識に繰り返す動作やパターンのことです。
クセの例①:体の向き
観察
- 相手がサーブを打つ時、体の向きを観る
パターンの発見
- ワイドに打つ時、少し外側を向く
- センターに打つ時、正面を向く
試合での活用
「体の向きで、サーブのコースが分かる!」
「外側を向いたら、ワイドに来る。準備しよう」
クセの例②:リターン位置
観察
- 相手がリターンする時、どこに立っているか
パターンの発見
- ベースラインの後ろに立つ
- あまり前に出ない
試合での活用
「この相手は、後ろに立つ癖がある」
「だったら、サーブ後にネットに詰めれば、リターンが浅くなるかも」
クセの例③:タイミング
観察
- 相手が打つタイミングを観る
パターンの発見
- 早い打点(ライジング)で打つことが少ない
- しっかり引きつけて打つタイプ
試合での活用
「この相手は、ライジングで打たないタイプ」
「だったら、速いボールより、遅いボールの方が効くかも」
このように、クセを見抜くことで、細かい戦術が立てられます。
第9話「視る力」で学んだように、試合中に相手を観察する力が重要です。試合前にクセを知っておけば、さらに有利になります。
観察すべき4つのポイント
対戦相手を観察する時、何に注目すればいいのでしょうか?
4つのポイントがあります。
① サーブのリズム
サーブは、試合の起点です。
相手のサーブの傾向を知ることで、リターンの準備ができます。
観察項目
コース
- ワイド、センター、ボディ、どこが多いか
- 1stサーブと2ndサーブで、コースが変わるか
スピード
- 速いサーブか、遅いサーブか
- スピンサーブか、フラットサーブか
リズム
- サーブを打つまでの時間(速い?遅い?)
- 何回ボールをつくか
- トスの高さは安定しているか
観察例
観察結果
- 1stサーブは、ワイドが多い
- 2ndサーブは、センターが多い
- サーブを打つ前に、必ず2回ボールをつく
- トスが安定していない(風が吹くと乱れる)
戦略
- 1stサーブは、ワイドに備えて少し外側に立つ
- 2ndサーブは、センターに備えて中央に立つ
- 相手がボールをつく時、リズムを読んでタイミングを合わせる
- トスが乱れた時は、チャンスボールが来る可能性が高い
このように、サーブのリズムを観察することで、リターンの準備ができます。
② ストロークの打点位置
ストロークの打点位置で、相手の得意・不得意が分かります。
観察項目
高さ
- 高い打点が得意か、低い打点が得意か
- 高いボール(トップスピン)を打たれた時、どう対応しているか
- 低いボール(スライス)を打たれた時、どう対応しているか
前後
- 早い打点(ライジング)で打つか、引きつけて打つか
- ベースラインより前で打つことが多いか、後ろが多いか
左右
- フォアハンドとバックハンド、どちらが得意か
- ランニングショット(走りながら打つ)は得意か
観察例
観察結果
- 高い打点は得意だが、低い打点は苦手
- 肩より高いボールになると、ミスが増える
- バックハンドは安定しているが、フォアハンドでミスが多い
- ベースラインより後ろからは、攻撃的なショットが打てない
戦略
- 低いスライスを多用する
- 時々、高いムーンボールで肩より高い打点にする
- フォアハンド側を狙って、ミスを誘う
- 深いボールで後ろに押し込めば、攻撃されない
このように、ストロークの打点位置を観察することで、攻め方が分かります。
第4話「コントロール5つの要素」で学んだように、高さ・深さ・コースをコントロールすることが重要です。相手の苦手な打点を知ることで、的確にコントロールできます。
③ ネットプレーへの反応
相手がネットプレーに対して、どう反応するかを観察します。
観察項目
パッシングショット
- ストレートとクロス、どちらが得意か
- パッシングショットを打つ時、焦ってミスが増えるか
ロブ
- ロブを打つことが多いか、少ないか
- ロブの精度は高いか、低いか
対ネットプレーヤー戦略
- 足元への低いボールを打てるか
- ネットプレーヤーに対して、攻撃的か守備的か
観察例
観察結果
- ネットプレーヤーに対して、ロブを多用する
- パッシングショットは苦手で、ミスが多い
- 足元への低いボールは、ほとんど打たない
戦略
- 積極的にネットに詰める
- ロブが来たら、スマッシュで決める
- パッシングショットは来ないと予測して、前に詰める
このように、ネットプレーへの反応を観察することで、ネットプレーの戦術が立てられます。
④ 感情の出方(リード時・劣勢時)
相手の感情のパターンを知ることも、重要です。
観察項目
リード時
- リードしている時、どういう態度か
- 攻撃的になるか、守備的になるか
- リラックスしているか、緊張しているか
劣勢時
- 劣勢の時、どういう態度か
- 焦りが出るか、冷静さを保つか
- プレーが崩れるか、立て直すか
ポイント間
- ポイント間で、どういう仕草をするか
- ガッツポーズをするか、うなだれるか
- ラケットを叩くか、叫ぶか
観察例
観察結果
- リードしている時は、落ち着いている
- 劣勢になると、焦りが出て、ミスが増える
- ミスした後、ラケットを叩く癖がある
- 連続でミスすると、さらに崩れる
戦略
- 序盤は、相手をリードさせない(同点を保つ)
- 一度リードを奪ったら、プレッシャーをかけ続ける
- 相手がミスしたら、すぐに次のポイントを取りに行く(連続ミスを誘う)
このように、感情の出方を観察することで、心理戦の戦術が立てられます。
第19話「モメンタム理論」で学んだように、試合の流れは感情によって変わります。相手の感情パターンを知ることで、流れを支配できます。
スカウティングノートの書き方
観察した内容は、ノートに記録しましょう。
記憶だけでは、忘れてしまいます。
「苦手ゾーン」「狙えるパターン」を記録
記録するのは、以下の2つです。
① 苦手ゾーン
- 相手がミスしやすい場所・状況
② 狙えるパターン
- 相手の得点パターンと、その対策
記録例
対戦相手:Aさん
苦手ゾーン
- バックハンドの高い打点(肩より上)
- 低いスライス(ネットすれすれ)
- ベースライン後方からの攻撃
狙えるパターン
- サーブ→リターン浅い→3球目攻撃
- 対策:リターンを深く返す
- クロスラリー→相手のミス待ち
- 対策:クロスラリーで粘る
- ドロップショット→ネットに詰める→ボレー
- 対策:ドロップショットに備えて、前に出る準備
感情パターン
- 劣勢時:焦りが出て、ミスが増える
- 対策:一度リードを奪ったら、プレッシャーをかけ続ける
このように、シンプルに記録することが重要です。
第14話「試合後の振り返りノート術」で学んだように、記録は簡潔に、要点だけを書くことが継続の鍵です。
1セット目の観察を2セット目に活かす
スカウティングは、試合前だけではありません。
試合中も、観察は続きます。
特に、1セット目の観察を、2セット目に活かすことが重要です。
具体例:1セット目の観察
1セット目
- 相手のサーブは、ワイドが多い
- でも、2ndサーブはセンターが多い
- バックハンドの低いボールで、ミスが増えた
チェンジオーバー(セット間)でノートに記録
- 1stサーブ:ワイド多い
- 2ndサーブ:センター多い
- バック低いボール→ミス増える
2セット目の戦略
- 1stサーブは、ワイドに備える
- 2ndサーブは、センターに備えて、積極的に攻める
- バックハンド側に、低いスライスを多用する
このように、1セット目の観察を記録して、2セット目に活かすことで、試合を有利に進められます。
試合中も観戦力は使える
スカウティングは、試合前だけではありません。
試合中も、相手を観察し続けることが重要です。
サーブ間の10秒が”情報収集タイム”
試合中、最も重要な観察時間は、サーブ間の10秒です。
この10秒で、何を観るべきか?
観察項目
相手のルーティン
- サーブ前に、何回ボールをつくか
- トスの高さは安定しているか
- 構えのタイミングは一定か
息づかい
- 呼吸が荒いか、落ち着いているか
- 疲れているか、まだ余裕があるか
構えの変化
- リターン位置が変わったか
- 構えが浅くなったか(疲れのサイン)
- 目線がどこを向いているか
観察例
観察
- 相手が、いつもより深く呼吸している
- サーブ前のボールつきが、いつもより速い
- トスが少し低くなっている
判断
「相手は疲れているな」
「サーブの精度が落ちるかもしれない」
戦略
「2ndサーブを積極的に攻めよう」
「少し前に出て、プレッシャーをかけよう」
このように、サーブ間の10秒の観察で、相手の状態を読み取れます。
相手のルーティン・息づかい・構えの変化を読む
試合中、相手は常に変化しています。
- 疲れてくる
- 焦り始める
- 作戦を変える
この変化を読み取ることが、試合中のスカウティングです。
変化の例①:ルーティンの乱れ
通常時
- サーブ前に、必ず2回ボールをつく
- トスは、肩の真上に上げる
変化後
- サーブ前に、3回ボールをついた(迷っている?)
- トスが少し前になった(フォームが乱れている?)
判断
「相手のリズムが崩れている」
「チャンスだ!」
変化の例②:構えの変化
通常時
- リターン位置は、ベースラインの後ろ
変化後
- リターン位置が、ベースラインより前になった
判断
「相手が、2ndサーブを攻めようとしている」
「だったら、2ndサーブは深く打とう」
このように、相手の変化を読み取ることで、戦術を調整できます。
第8話「ラリーは対話」で学んだように、テニスは相手との対話です。相手の変化を読み取り、それに応じて自分も変化することが重要です。
観察眼を磨けば、試合前から有利に立てる
対戦相手を観察する技術は、試合前の準備です。
試合前に相手の傾向を知っておけば、コートに立った瞬間から、戦略が決まっています。
- 相手の苦手ゾーンはどこか
- 相手の得点パターンは何か
- 相手の感情パターンはどうか
これを知っているだけで、試合は有利に進みます。
そして、試合中も観察は続きます。
- サーブ間の10秒で、相手の状態を読み取る
- 1セット目の観察を、2セット目に活かす
- 相手の変化を読み取り、戦術を調整する
この観察眼が、勝利への鍵です。
次の試合、対戦相手の試合を観察してみましょう。
ノートに記録して、試合前に戦略を立てましょう。
「相手を知る」ことが、「自分が勝つ」ことにつながります。
次回は、「プロの試合を観る力」について解説します。
プロの試合から学ぶことで、自分のテニスが劇的に変わります。お楽しみに!


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