プロ観戦で伸びる人、伸びない人

テニス
  1. 同じ試合を観ても、学べる人と観るだけの人がいる
  2. プロ観戦を「感動」で終わらせないために
    1. 見るべきはショットではなく「準備」と「判断」
      1. 結果を観る vs プロセスを観る
      2. 具体例:フェデラーのフォアハンド
    2. テレビ観戦でもコート観戦でも、観察軸を持つ
      1. テレビ観戦の利点
      2. コート観戦の利点
  3. 観戦で注目すべき3つのポイント
    1. ① フットワークの方向(なぜそこに動いたか)
      1. 観察項目
      2. 具体例:ナダルのフットワーク
      3. なぜフットワークを観るのか
    2. ② ポジショニングの深さ(ベースラインとの距離)
      1. 観察項目
      2. 具体例:ジョコビッチのポジショニング
      3. なぜポジショニングを観るのか
    3. ③ ポイント間の振る舞い(リセット・切替)
      1. 観察項目
      2. 具体例:フェデラーのポイント間
      3. なぜポイント間を観るのか
  4. 観戦メモの取り方例
    1. 「印象的なポイント」を時間付きでメモ
      1. メモの例
    2. “なぜそれが有効だったか”を一言で書く
      1. メモの構造
  5. 観戦は最強のイメージトレーニング
    1. 観た動きを頭の中で再現するだけでも上達する
      1. イメージトレーニングの方法
    2. 見る→真似る→再現するの3ステップが理想
      1. 具体例:ジョコビッチのリターン
  6. プロ観戦で避けるべき3つの罠
    1. 罠①:レベルの違いを忘れる
    2. 罠②:フォームだけを真似る
    3. 罠③:観るだけで満足する
  7. テニスは「打つ」スポーツではなく、「見る」スポーツでもある
    1. 自分を観て、仲間を観て、相手を観て、プロを観る
    2. 観る力が、勝つ力になる

同じ試合を観ても、学べる人と観るだけの人がいる

「錦織選手のフォアハンド、すごい!」
「ジョコビッチのリターン、信じられない!」

プロの試合を観て、こう感動する。

これは、素晴らしいことです。

でも、ここで終わってしまうのは、もったいない。

同じ試合を観ても、学べる人観るだけの人がいます。

その差は、「どこを見ているか」です。

今回は、プロの試合を「教材」として使うための観戦法を紹介します。

推し選手のプレーを、「なぜそう打ったのか」という視点で観れば、明日からの自分の練習が変わります。

第31話から第33話で、自分・仲間・対戦相手を観る技術を学びました。

今回は、その最終段階です。プロの試合を観る技術を解説します。

プロ観戦を「感動」で終わらせないために

見るべきはショットではなく「準備」と「判断」

プロの試合を観る時、多くの人はこう観ます。

「うわー、速いサーブ!」
「すごいフォアハンド!」
「信じられないアングルショット!」

これは、「結果」を観ています。

でも、学びが深いのは、「プロセス」を観ることです。

結果を観る vs プロセスを観る

結果を観る

  • 「すごいショットだ!」
  • 「信じられない!」
  • 感動して終わり

プロセスを観る

  • 「なぜ、そのショットを選んだのか?」
  • 「どうやって、そのポジションに入ったのか?」
  • 「打つ前に、何を見ていたのか?」

プロセスを観ることで、学びに変わります。

具体例:フェデラーのフォアハンド

結果を観る
「フェデラーのフォアハンド、すごい!あんなショット、打ちたい!」

プロセスを観る
「あのフォアハンドを打つ前、フェデラーは何をしていたか?」

  • 相手のショットが浅かった
  • フェデラーは、すぐに前に出た(早い準備)
  • 相手のポジションを見た(相手が右にいる)
  • オープンスペース(左側)に打ち込んだ

学び
「フェデラーは、相手のショットが浅い瞬間に、すぐに前に出ている」
「そして、相手のポジションを確認して、オープンスペースに打っている」
「自分も、浅いボールが来たら、すぐに前に出る習慣をつけよう」

このように、プロセスを観ることで、具体的な学びになります。

第28話「中上級者のシングルス戦術」で学んだように、上級者は「準備」と「判断」が優れています。プロの準備と判断を観察することで、自分の戦術が磨かれます。

テレビ観戦でもコート観戦でも、観察軸を持つ

プロの試合を観る方法は、2つあります。

  • テレビ観戦(テレビ、ネット配信)
  • コート観戦(会場で直接観る)

どちらでも、観察軸を持つことが重要です。

テレビ観戦の利点

利点

  • カメラが選手を追うので、表情やボールの軌道が分かりやすい
  • スロー再生で、フォームを詳しく観察できる
  • 解説者のコメントで、戦術が理解できる

観察のコツ

  • スロー再生で、フットワークやフォームを観る
  • 解説者の「なぜそう打ったか」の説明に注目
  • ポイント間の選手の表情や仕草を観る

コート観戦の利点

利点

  • コート全体が見えるので、ポジショニングが分かる
  • 選手の動きの全体像が見える
  • ボールのスピード感、音、雰囲気が分かる

観察のコツ

  • カメラが映さない「ボールを打っていない時の動き」を観る
  • ポイント間で、選手がどこを見ているか観る
  • 相手との駆け引きを観る

どちらの観戦でも、「なぜそう打ったか」を考えながら観ることが重要です。

観戦で注目すべき3つのポイント

プロの試合を観る時、何に注目すればいいのでしょうか?

3つのポイントがあります。

① フットワークの方向(なぜそこに動いたか)

プロの試合を観る時、ボールではなく、選手の足を観ましょう。

なぜなら、足の動きが、すべてを決めているからです。

観察項目

打つ前の動き

  • ボールを打った後、どこに動いているか
  • 打った瞬間、次のポジションに移動しているか

予測の動き

  • 相手が打つ前に、動き出しているか
  • どのタイミングで動き出しているか

リカバリー(戻る動き)

  • ボールを打った後、どこに戻っているか
  • センターに戻るか、それとも別の場所か

具体例:ナダルのフットワーク

観察

  • ナダルがフォアハンドを打った
  • 打った瞬間、すでに次のポジション(センター)に移動している
  • 相手が打つ前に、構えが完成している

学び
「ナダルは、打った瞬間に次の準備をしている」
「自分も、打った後すぐに次のポジションに移動する習慣をつけよう」

なぜフットワークを観るのか

プロのショットは、速すぎて真似できません。

でも、フットワークは真似できます。

  • 打った後、すぐに動く
  • 相手が打つ前に、予測して動く
  • 常に構えを作る

この動きのパターンを観察して、真似することができます。

第10話「運動神経」で学んだように、テニスの運動神経は、反応の速さと予測の能力です。プロのフットワークを観察することで、予測の能力が磨かれます。

② ポジショニングの深さ(ベースラインとの距離)

プロの選手は、ポジショニングが絶妙です。

どこに立つかで、試合の主導権が変わります。

観察項目

攻撃時のポジション

  • 攻めている時、どこに立っているか
  • ベースラインより前か、後ろか

守備時のポジション

  • 守っている時、どこに立っているか
  • どこまで下がるか

ポジションの変化

  • 相手のショットに応じて、どうポジションを変えているか

具体例:ジョコビッチのポジショニング

観察

  • ジョコビッチは、相手が守勢の時、ベースラインの前に立つ
  • 相手が攻めてきた時、ベースラインの後ろに下がる
  • でも、すぐに前に戻る

学び
「ジョコビッチは、ポジションを頻繁に変えている」
「攻めている時は前、守っている時は後ろ」
「自分も、ポジションを意識して変えてみよう」

なぜポジショニングを観るのか

ポジショニングは、戦術の核です。

前に立てば、時間を奪える。後ろに立てば、時間を作れる。

プロは、このポジションの使い分けが絶妙です。

第7話「時間を奪い合うスポーツ」で学んだように、ポジショニングが時間のコントロールを決めます。プロのポジショニングを観察することで、時間の使い方が分かります。

③ ポイント間の振る舞い(リセット・切替)

プロの試合を観る時、ポイント間も観ましょう。

なぜなら、ポイント間の振る舞いが、次のポイントを決めるからです。

観察項目

ミスした後

  • ミスした後、どういう仕草をするか
  • うなだれるか、すぐに切り替えるか
  • 次のポイントまで、何をしているか

ポイントを取った後

  • ポイントを取った後、どういう仕草をするか
  • ガッツポーズをするか、淡々としているか
  • 次のポイントまで、どうリセットしているか

呼吸・表情

  • 呼吸は深いか、浅いか
  • 表情は険しいか、リラックスしているか

具体例:フェデラーのポイント間

観察

  • フェデラーは、ミスした後も表情が変わらない
  • 淡々と次のポイントに向かう
  • ポイント間で、深呼吸をして、リセットしている

学び
「フェデラーは、ミスを引きずらない」
「ポイント間で、深呼吸してリセットしている」
「自分も、ミスした後、深呼吸してリセットしよう」

なぜポイント間を観るのか

ポイント間の振る舞いは、メンタルのコントロールを表しています。

プロでも、ミスはします。

でも、ミスを引きずらない技術を持っています。

第17話「タイプ別メンタル傾向と立て直し方」で学んだように、立て直しの方法は人それぞれです。プロがどう立て直しているかを観察することで、自分の立て直し方のヒントが得られます。

観戦メモの取り方例

プロの試合を観たら、メモを取りましょう。

記憶だけでは、忘れてしまいます。

「印象的なポイント」を時間付きでメモ

メモするのは、印象的なポイントだけでいいです。

すべてを記録する必要はありません。

メモの例

試合:フェデラー vs ナダル(2019年ウィンブルドン決勝)

1. 第1セット 3-2、40-30

  • フェデラーがサーブ→ナダルのリターンが浅い→フェデラーが前に出てアプローチショット→ネットに詰める→ボレーで決める
  • 学び:浅いリターンを見たら、すぐに前に出る判断

2. 第2セット 5-4、30-30

  • ナダルが深いトップスピンで相手を後ろに押し込む→フェデラーが後ろに下がる→ナダルがドロップショット→フェデラーが追いつけない
  • 学び:深いボールで相手を後ろに固定してから、ドロップショット

3. 第3セット 2-2、ブレークポイント

  • フェデラーがミスした→ポイント間で深呼吸→表情が変わらない→次のポイント、すぐにブレークバック
  • 学び:ミスした後、深呼吸してリセット。次のポイントに集中

このように、印象的なポイントだけを記録します。

“なぜそれが有効だったか”を一言で書く

メモするのは、事実と学びの2つです。

  • 事実:何が起こったか
  • 学び:なぜそれが有効だったか、自分に応用できることは何か

メモの構造

【事実】

  • フェデラーが浅いリターンを見て、すぐに前に出た

【学び】

  • 浅いボールが来たら、すぐに前に出る判断が重要

このように、シンプルに記録することが重要です。

第14話「試合後の振り返りノート術」で学んだように、記録は簡潔に、要点だけを書くことが継続の鍵です。

観戦は最強のイメージトレーニング

プロの試合を観ることは、イメージトレーニングになります。

なぜなら、観た動きを頭の中で再現するだけでも、上達するからです。

観た動きを頭の中で再現するだけでも上達する

スポーツ科学の研究では、イメージトレーニングの効果が証明されています。

  • 頭の中で動きをイメージすると、脳の運動野が活性化する
  • 実際に体を動かさなくても、運動能力が向上する

つまり、プロの試合を観て、その動きをイメージするだけで、上達するのです。

イメージトレーニングの方法

ステップ①:観る

  • プロの試合を観る
  • フットワーク、ポジショニング、ショット選択を観察

ステップ②:イメージする

  • 目を閉じて、その動きを頭の中で再現する
  • 「自分がフェデラーだったら、こう動く」とイメージ

ステップ③:練習で試す

  • 次の練習で、イメージした動きを試してみる
  • 「フェデラーみたいに、浅いボールが来たら、すぐに前に出てみよう」

このように、観る→イメージする→試すの3ステップで、上達します。

見る→真似る→再現するの3ステップが理想

プロの試合を観る時、この3ステップを意識しましょう。

ステップ①:見る

  • プロの動きを観察する
  • 「なぜそう動いたか」を考える

ステップ②:真似る

  • プロの動きを、頭の中で真似る
  • 自分がその場面にいたら、どう動くかイメージする

ステップ③:再現する

  • 練習で、その動きを試してみる
  • 試合で、その戦術を使ってみる

具体例:ジョコビッチのリターン

ステップ①:見る

  • ジョコビッチのリターンを観る
  • リターン位置は、ベースラインのすぐ後ろ
  • 早い打点(ライジング)で返している
  • 深く返して、相手を後ろに押し込んでいる

ステップ②:真似る

  • 頭の中で、ジョコビッチのリターンをイメージする
  • 「自分も、ベースラインのすぐ後ろに立ってみよう」
  • 「早い打点で、深く返すイメージを持とう」

ステップ③:再現する

  • 次の練習で、リターン位置をベースラインのすぐ後ろにしてみる
  • 早い打点で打つ練習をする
  • 試合で、深いリターンを意識する

このように、見る→真似る→再現するの3ステップで、プロの技術を自分のものにできます。

第13話「ゲーム・ベースド・アプローチ」で学んだように、実戦で使える技術を身につけることが重要です。プロの試合を観察して、実戦で試すことで、技術が身につきます。

プロ観戦で避けるべき3つの罠

プロの試合を観る時、注意すべきことがあります。

罠①:レベルの違いを忘れる

プロのショットは、圧倒的に速くて、正確です。

でも、それをそのまま真似しようとすると、失敗します。

避けるべき考え方
「フェデラーみたいに、あの速いフォアハンドを打ちたい!」
「ナダルみたいに、あんな高いスピンを打ちたい!」

正しい考え方
「フェデラーは、浅いボールが来たら、すぐに前に出る判断をしている。これは真似できる」
「ナダルは、深いボールで相手を後ろに押し込んでから、ドロップショットを打っている。この戦術は真似できる」

プロの「判断」と「戦術」を真似ることが重要です。

プロの「スピード」と「パワー」は真似できません。

罠②:フォームだけを真似る

プロのフォームを真似することは、悪いことではありません。

でも、フォームだけを真似ても、上達しません。

なぜなら、フォームは、その人の体格や筋力に合わせて作られているからです。

避けるべき考え方
「フェデラーのフォームを完璧に真似しよう!」

正しい考え方
「フェデラーのフォームの中で、自分にも応用できる部分はどこか?」
「テイクバックの小ささは、自分にも真似できるかも」

フォームの「エッセンス」だけを真似ることが重要です。

罠③:観るだけで満足する

プロの試合を観て、「すごい!」と感動する。

これは素晴らしいことです。

でも、観るだけで終わってしまうと、上達しません。

避けるべき考え方
「フェデラーの試合、最高だった!」(終わり)

正しい考え方
「フェデラーの試合、最高だった!あの浅いボールから前に出る判断、明日の練習で試してみよう」

観た後に、行動することが重要です。

テニスは「打つ」スポーツではなく、「見る」スポーツでもある

第31話から第34話まで、4つの観戦術を学びました。

  1. 自分を観る(第31話)
  2. 仲間を観る(第32話)
  3. 相手を観る(第33話)
  4. プロを観る(第34話)

この4つを通じて、一つの真実が見えてきます。

テニスは「打つ」スポーツではなく、「見る」スポーツでもある。

観る対象を変えることで、あなたのテニスの深さはどんどん広がります。

自分を観て、仲間を観て、相手を観て、プロを観る

自分を観る

  • 自分の癖、判断のパターン、感情のパターンを知る
  • 客観的に自分を理解する

仲間を観る

  • 自分にはない視点を得る
  • 他人の思考プロセスを理解する

相手を観る

  • 相手の傾向を掴む
  • 試合前から戦略を立てる

プロを観る

  • 最高レベルの判断と戦術を学ぶ
  • イメージトレーニングで技術を磨く

この4段階を経験した時、あなたの「観戦力」「勝つ力」に変わります。

観る力が、勝つ力になる

テニスは、観察のスポーツです。

相手を観る。ボールを観る。コートを観る。自分を観る。

この観察眼が、勝敗を分けます。

第9話「視る力」で学んだように、視野の使い方が判断の質を決めます。

第31話から第34話で学んだ観戦術は、視野を広げる技術です。

観る力を磨けば、テニスが変わります。

今週末、試合を観に行きましょう。

自分の試合、仲間の試合、対戦相手の試合、プロの試合。

何でもいいです。

そして、「なぜそう打ったのか」を考えながら観てみましょう。

その瞬間、あなたの観戦力が、勝つ力に変わり始めます。


これで、観戦シリーズ(第31話〜第34話)は完結です!

次回からは、新しいテーマでお会いしましょう。お楽しみに!

コメント

タイトルとURLをコピーしました