テニスに必要な技術、いくつあると思いますか?
フォアハンド、バックハンド、サーブ、ボレー、スマッシュ、ロブ…数え始めたらキリがありません。でも実は、テニスの技術は大きく分けるとたった3つに集約されるのです。
そして、その3つの中で最も大切なのは3つ目。多くの人が見落としているこの技術こそが、試合で勝てるかどうかを決める鍵になります。
今日は、テニスの本質を成す3つの技術について、深く掘り下げていきましょう。
テニスを構成する3つの技術
テニスの技術は、以下の3つで構成されています。
- フットワーク:自分にとってより良い打点に動ける力
- ショットの技術:自分の思ったように打てる技術
- 状況判断力:1の結果から2の中で自分が打てるショットを選ぶ判断力
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
1. フットワーク:全ての基礎となる技術
フットワークとは、ボールに対して素早く動き、自分にとって最適な位置に入る技術です。
どんなに素晴らしいフォームを身につけていても、ボールに追いつけなければ意味がありません。逆に、しっかりとボールの位置に入れれば、打つこと自体はそれほど難しくないのです。
もしフットワークが完璧なら、常に理想的な打点で打てます。そうなれば、自分の好きなようにプレーしても、ミスすることはほとんどなくなるでしょう。
でも、そんなプレイヤーは存在しません。
相手のショットは毎回違います。速さも、コースも、高さも、回転も。その全てに対して、完璧なポジショニングを取り続けることは、プロでも不可能なのです。
2. ショットの技術:表現の幅を広げる技術
ショットの技術とは、自分がイメージした通りにボールを打てる技術です。
トップスピン、スライス、フラット。速いボール、遅いボール。高く、低く。深く、浅く。左右に打ち分ける。これら全てを自在にコントロールできる技術です。
もしショットの技術が完璧なら、どんな体勢からでも、どんなショットでも打てます。追いつきさえすれば、相手を翻弄する魔法のようなショットを繰り出せるでしょう。
でも、そんなプレイヤーは存在しません。
体勢が崩れたとき、打点が低いとき、相手に押し込まれたとき。こうした不利な状況から、理想通りのショットを打つことは極めて困難です。プロでさえ、体勢によって打てるショットは限られてくるのです。
3. 状況判断力:勝敗を分ける本当の技術
そして最も大切なのが、状況判断力です。
状況判断力とは、「フットワークの結果、自分がどんな体勢になったか」を正確に把握し、「その体勢から、どのショットを選択するのがベストか」を瞬時に判断する力です。
これこそが、テニスの本質なのです。
なぜ状況判断力が最も大切なのか
理由は明確です。フットワークもショットの技術も、完璧にはできないからです。
- フットワークが優れていれば、打てるショットの選択肢は増えます
- ショットの技術が優れていれば、同じく選択肢は増えます
でも、どんなに優れていても、選択肢は必ず限られます。だからこそ、その限られた選択肢の中から、最適なものを選ぶ判断力が勝敗を分けるのです。
状況判断力の具体例
例えば、こんな場面を想像してください。
相手の強烈なショットで、後ろに追い込まれてしまいました。何とか追いついたものの、体勢は完全に崩れています。
判断力のないプレイヤーは、こう考えます。
「速いボールで攻めたい」→ミスして失点
判断力のあるプレイヤーは、こう考えます。
「今の体勢では速いボールは打てない。高く深いロブで時間を稼ぎ、体勢を立て直そう」→ポイントを継続
同じ技術レベルでも、判断力の差で結果は大きく変わるのです。
3つの技術のバランス
理想は、3つ全てをバランスよく高めることです。
- フットワークを鍛える:より多くの選択肢を持てるようになる
- ショットの技術を磨く:表現できる幅が広がる
- 状況判断力を養う:限られた選択肢から最適な一手を選べる
しかし、時間は有限です。どこに重点を置くべきでしょうか。
多くの人は、1と2ばかり練習します。フットワークドリル、ショット練習。もちろん大切です。でも、3の状況判断力を意識的に鍛えている人は驚くほど少ないのです。
状況判断力を鍛える方法
では、どうやって状況判断力を養えばいいのでしょうか。
練習中に「なぜ?」を考える
ただボールを打つのではなく、一球一球「なぜこのショットを選んだのか」を考えます。
- なぜこのコースに打ったのか
- なぜこの速さにしたのか
- なぜトップスピンを選んだのか
意識的に判断を繰り返すことで、判断力は確実に向上します。
試合やラリーで実験する
「このショットを打ったら、相手はどう反応するだろう?」という仮説を立てて、実際に試してみます。結果を観察し、次の判断に活かす。このPDCAサイクルが、判断力を研ぎ澄ませます。
プロの試合を「判断」の視点で見る
プロの試合を見るとき、「なぜ今このショットを選んだのだろう?」と考えながら見ます。プロの判断には、必ず理由があります。その思考を追体験することで、自分の判断力も磨かれていきます。
テニスは「判断力」のスポーツ
結局のところ、テニスは判断力のスポーツです。
技術があっても、それをいつ、どのように使うかを判断できなければ、宝の持ち腐れです。逆に、限られた技術しかなくても、状況に応じて最適な判断ができれば、自分より技術の高い相手にも勝てるのです。
次回コートに立つときは、ぜひ「判断」を意識してみてください。
「今、自分はどんな体勢か?」
「この体勢から、何が打てるか?」
「その中で、何がベストか?」
この3つの問いを繰り返すだけで、あなたのテニスは確実に変わります。技術は一朝一夕には上がりませんが、判断力は今日から、この瞬間から高められるのです。
フットワーク、ショットの技術、そして状況判断力。この3つの技術を意識して、バランスよく成長していきましょう。特に、見落とされがちな3つ目の判断力。これこそが、あなたを次のレベルへと導く鍵になるはずです。


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