テニスの本質は「時間の奪い合い」
「速いボールが打てないから、攻撃的なテニスができない」
そう思っていませんか? でも実は、速いボールを打てなくても攻撃はできるのです。
なぜなら、テニスの本質は速さの勝負ではなく、時間の奪い合いだからです。この視点を理解すれば、あなたの戦術の幅は一気に広がります。
速いショットはなぜ有効なのか
まず、基本から考えてみましょう。速いショットを相手が打ってきたとき、何が起こるでしょうか。
- 追いつく時間が少ない
- 準備する時間が少ない
- 判断する時間が少ない
つまり、相手から時間を奪っているのです。
だから速いショットはポイントに繋がりやすい。相手に十分な準備をさせないまま、打たせることができるからです。これが、速いボールが強力な理由の本質です。
守りのロブが有効な理由も「時間」
逆に、守りのショットの代表格、ロブを考えてみましょう。
ロブは遅いボールです。でも、なぜ有効なのでしょうか。
自分が打ってから相手が打つまでの時間が長いからです。
この長い時間で何ができるでしょうか。
- 体勢を整える時間ができる
- レディーポジションに戻る時間ができる
- 次のショットを考える時間ができる
- 息を整える時間ができる
ロブは、速いボールとは真逆のアプローチで、自分に時間を与えるショットなのです。
時間という視点でショットを選択する
この「時間」という視点を持つと、ショット選択の基準が明確になります。
相手から時間を奪いたいとき
- 速いボールを打つ
- 低いボールを打つ(後述)
- 早いタイミングで打つ(ライジング)
- 前に詰める
自分に時間を与えたいとき
- 高いロブを打つ
- 深いボールを打つ
- スライスで滞空時間を長くする
自分が今、時間が欲しいのか、相手から時間を奪いたいのか。この判断ができれば、どんなショットを打つべきかが自然と見えてくるのです。
速く打てなくても攻められる秘密
ここからが重要です。多くの人が見落としている、速いボールを打てなくても攻撃できる方法があります。
それが、低いボールを打つことです。
低いボールが攻撃的な理由
低いボールは、2バウンドするまでの時間が短いのです。
高い軌道のボールは、山なりに飛んで、高くバウンドして、それから2バウンド目まで時間がかかります。でも、低い軌道のボールは、ネットすれすれを通り、低くバウンドして、すぐに2バウンド目に達します。
つまり、速いボールと同じ効果が得られているわけです。
相手は、
- 素早く前に走らなければならない
- 低い打点で打たなければならない
- 準備する時間が少ない
速度は遅くても、時間的なプレッシャーは速いボールと変わらないのです。
低いボールの具体的な使い方
スライスは、低いボールを打つ最も有効な方法です。
- ネットすれすれを通る低い軌道
- バウンド後に滑って低く弾む
- 2バウンドまでの時間が短い
速いフラットボールが打てなくても、低いスライスで相手から時間を奪い、攻撃的なテニスができるのです。
特に、
- ドロップショット:極端に低く、浅いボール
- アプローチショット:低く滑るスライス
- バックハンドスライス:相手の足元を狙う低いボール
これらは全て、速度ではなく「時間を奪う」という視点から攻撃的なショットなのです。
時間の観点から見た各ショットの特徴
では、主なショットを「時間」の観点から整理してみましょう。
相手から時間を奪うショット
- 速いフラット: 直接的に時間を奪う
- 低いスライス: バウンドまでの時間を短縮
- ドロップショット: 極端に時間を短縮
- ライジングショット: 相手のリズムを崩す
- 角度のあるショット: 移動距離が長く、時間が足りなくなる
自分に時間を与えるショット
- 高いロブ: 滞空時間が長い
- 深いトップスピン: 相手を後ろに下げて、距離を稼ぐ
- ムーンボール: 極端に高く、時間を稼ぐ
速さだけがテニスじゃない
この「時間」という視点を持つと、何が変わるでしょうか。
速いボールが打てなくても、攻撃的なテニスができるようになります。
- 体力がない人でも、低いスライスで攻められる
- パワーがない人でも、角度とタイミングで時間を奪える
- シニアプレイヤーでも、戦術的に相手を追い込める
速さは、攻撃の一つの手段にすぎません。時間を奪う方法は、他にもたくさんあるのです。
時間のコントロールが試合を制する
上級者になると、この時間のコントロールが非常に巧みです。
- ラリーのリズムを自在に変える
- 相手に時間を与えず、攻め続ける
- ピンチでは時間を稼いで、体勢を立て直す
- 相手のリズムを読んで、あえてタイミングを外す
彼らは、「時間」という目に見えない要素を、まるで手に取るようにコントロールしているのです。
実践:時間を意識した練習
では、どうやってこの「時間の感覚」を身につければいいでしょうか。
練習方法1:意識的に時間を変える
一つのラリー練習の中で、意識的に速いボールと遅いボール、高いボールと低いボールを混ぜてみます。相手がどう反応するか観察しましょう。
練習方法2:低いボールの練習
スライスやドロップショットを重点的に練習します。「速度ではなく、時間で攻める」感覚を体に覚えさせましょう。
練習方法3:ロブで時間を稼ぐ練習
追い込まれたときに、確実にロブで時間を稼ぐ練習をします。守りから攻めへの転換を、時間という観点から練習するのです。
時間を制する者が試合を制する
テニスは時間の奪い合いです。
速いボールを打つことだけが攻撃ではありません。低いボール、角度のあるボール、タイミングを外すボール。時間を奪う方法は無数にあります。
そして、自分がピンチのときは、高いボールや深いボールで時間を稼ぐ。この攻守のコントロールができたとき、あなたは試合の流れを自在に操れるようになります。
次回コートに立つときは、ぜひ「時間」を意識してみてください。
「このショットで、相手から時間を奪えているか?」 「今は時間を稼ぐべきか、奪うべきか?」
この視点を持つだけで、あなたの戦術は格段に広がります。速さだけに頼らない、知的で戦略的なテニス。それが、あなたを次のレベルへと導いてくれるはずです。


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