「上手い・下手」ではなく「なぜそう打ったのか」
練習仲間の試合を観る時、こう思いませんか?
「あの人、上手いな」
「この人、ミス多いな」
でも、それだけで終わってしまうのは、もったいないです。
練習仲間の試合を観る時、考えるべきことは一つ。
「なぜ、そう打ったのか?」
そこに、自分が無意識に持つ思考パターンが映っています。
前回の第31話では、自分の試合を観る方法を学びました。
今回は、他人の試合を観る技術を解説します。
実は、他人の試合を観ることで、自分のテニスが見えてくるのです。
仲間の観戦は”他者理解”ではなく”自己理解”
同じ状況で自分ならどう打つか?の比較視点
他人の試合を観る時、ただ眺めるだけでは、学びが少ないです。
「自分だったら、どうするか?」
これを常に考えながら観ると、学びが深まります。
具体例:チャンスボールの処理
場面
- 相手がミスして、浅いボールが来た
- 練習仲間は、そのボールをクロスに返した
- ラリーが続いた
ただ眺める観戦
「へー、クロスに打ったんだ」
比較しながら観る観戦
「あの場面、自分だったらストレートに打ち込むな」
「でも、この人はクロスに打った。なぜだろう?」
「相手のポジションを見ると、ストレートが空いていた」
「それでも、クロスを選んだ理由は何だろう?」
このように、自分との違いに注目すると、新しい発見があります。
発見例
自分の思考
- チャンスボールは、すぐに攻める
- リスクを取ってでも、決めに行く
仲間の思考
- チャンスボールでも、まず安全に返す
- 次のチャンスを待つ
気づき
「自分は、チャンスボールで焦って打ちすぎているかもしれない」
「まず安全に返して、次のチャンスを待つという選択肢もあるんだ」
このように、自分にはない視点を得ることができます。
第6話「試合で勝つ3つの条件」で学んだように、「攻める時」と「我慢する時」の判断が、勝敗を分けます。他人の判断を観察することで、自分の判断基準を見直せます。
無意識のクセに気づく観察力
他人の試合を観ていると、こう思うことがあります。
「あ、この人、同じミスを繰り返してるな」
「この人、焦るとフォームが崩れるな」
でも、これは自分も同じかもしれません。
他人のクセに気づくということは、自分のクセにも気づく可能性があるということです。
具体例:ミスした後のパターン
観察
- 練習仲間が、フォアハンドをミスした
- 次のポイント、また同じミスをした
- その次も、ミスした
「この人、ミスを引きずってるな」
自己理解
「あれ?自分も同じじゃないか?」
「自分もミスした後、連続でミスすることが多い」
「この人と同じパターンだ」
気づき
「ミスを引きずる癖があるんだ」
「ポイント間で、リセットする習慣が必要だ」
このように、他人を観察することで、自分のクセに気づくことができます。
第17話「タイプ別メンタル傾向と立て直し方」で学んだように、自分のメンタルパターンを知ることが、立て直しの第一歩です。
観戦で注目すべき3ポイント
他人の試合を観る時、何に注目すればいいのでしょうか?
3つのポイントがあります。
① リズム(テンポの速さ・準備の早さ)
リズムとは
- ボールを打つテンポ
- 次のショットへの準備の早さ
- ポイント間の過ごし方
人によって、リズムは全く違います。
リズムの違いを観察する
Aさんのリズム
- ボールを打った後、すぐに次の準備
- 早い打点(ライジング)で打つ
- テンポが速い
Bさんのリズム
- ボールを打った後、ゆっくり構える
- バウンドしてから、しっかり引きつけて打つ
- テンポがゆっくり
自分のリズムと比較
「自分はどっちに近いだろう?」
「Aさんのような速いテンポも、試してみようかな」
「Bさんのようなゆっくりしたリズムも、必要かもしれない」
このように、自分にはないリズムを観察することで、新しい戦術のヒントが得られます。
第28話「中上級者のシングルス戦術」で学んだ「時間の奪い合い」は、リズムのコントロールが鍵です。他人のリズムを観察することで、自分のリズムを客観視できます。
② 選択(打つショットとその理由)
選択とは
- どのショットを選ぶか(クロス、ストレート、ドロップ、ロブ)
- なぜそのショットを選んだか
人によって、選択の傾向は全く違います。
選択の違いを観察する
Cさんの選択
- クロスラリーが多い
- ストレートはほとんど打たない
- 安全第一
Dさんの選択
- ストレートを頻繁に打つ
- ドロップショットも多用
- リスクを取る
自分の選択と比較
「自分は、Cさんのように安全志向かな」
「それとも、Dさんのようにリスクを取るタイプかな」
「もしかしたら、自分はストレートを打つ機会を逃しているかもしれない」
このように、自分の選択傾向を知ることができます。
選択の理由を考える
さらに深く観察するなら、「なぜその選択をしたのか」を考えましょう。
場面
- Cさんが、相手のバック側に打った
- 相手のフォア側が空いていたのに
理由を考える
「なぜ、フォア側ではなく、バック側を選んだのか?」
- 相手のバックが弱いと分析していた?
- バック側の方が、自分にとって打ちやすかった?
- それとも、フォア側が空いていることに気づかなかった?
試合後に質問する
「あの場面、なんでバック側に打ったの?フォア側空いてたよね?」
「あ、そうなんだよ。でも、相手のバックが弱いって分かってたから、あえてバック側に打ったんだ」
気づき
「なるほど!オープンスペースより、相手の弱点を狙う選択もあるんだ」
このように、選択の理由を理解することで、戦術の幅が広がります。
第27話「初中級者のシングルス戦術」で学んだように、ショット選択は戦術の核です。他人の選択を観察することで、自分の選択肢を増やせます。
③ 反応(ピンチ時の対応)
反応とは
- ピンチの時、どう対応するか
- 劣勢の時、どう立て直すか
- 焦った時、どう振る舞うか
ピンチの時の反応は、人によって全く違います。
反応の違いを観察する
Eさんの反応(ピンチの時)
- より積極的に攻める
- リスクを取って、流れを変えようとする
- ガッツポーズで自分を鼓舞
Fさんの反応(ピンチの時)
- より安全に返す
- ミスを減らして、相手のミスを待つ
- 冷静に、淡々とプレーを続ける
自分の反応と比較
「自分は、ピンチの時、どっちのタイプだろう?」
「Eさんみたいに、攻めるタイプかな」
「それとも、Fさんみたいに、守るタイプかな」
このように、自分のピンチ時の反応パターンを知ることができます。
第29話「MBTI×シングルス戦略」で学んだように、性格タイプによってピンチ時の反応は変わります。他人の反応を観察することで、自分の性格傾向を理解できます。
どちらが正解か?
実は、どちらも正解です。
Eさんのように攻めることで、流れを変えることもあります。
Fさんのように守ることで、相手のミスを誘うこともあります。
重要なのは、自分がどちらのタイプか知ることです。
そして、状況によって使い分けることです。
他人の反応を観察することで、「自分にはない選択肢」を知ることができます。
観戦後のコミュニケーションが学びを深める
他人の試合を観た後、何を話すかが重要です。
「あの展開、どう考えてた?」と質問してみる
試合後、こう話しかけてみましょう。
「お疲れ様!あの第3ゲーム、あの展開、どう考えてた?」
これだけで、相手の思考プロセスが分かります。
具体例
あなた
「あの場面、なんでドロップショット打ったの?」
仲間
「あ、相手が後ろに下がってたから、前に落とせば決まると思ったんだよね」
あなた
「なるほど!相手の位置を見てたんだね。俺だったら、気づかずにクロスに打ってたかも」
仲間
「あー、でも俺、クロスに打つの苦手だから、ドロップショットに逃げた部分もあるんだよね(笑)」
あなた
「そうなんだ!じゃあ、次は一緒にクロスラリーの練習しようよ」
このように、対話を通じて、お互いの思考が分かります。
そして、お互いの課題が見えてきます。
相手を評価するより”共有”するスタンスで話す
試合後、こう言ってしまいがちです。
「あの場面、ストレートが空いてたよ。なんでクロスに打ったの?」
これは、評価です。
相手は、責められていると感じます。
でも、こう言い換えるだけで、印象が変わります。
「あの場面、俺だったらストレート打ってたと思うんだけど、クロスを選んだ理由って何だった?」
これは、共有です。
相手は、「自分の考えを聞いてくれている」と感じます。
評価ではなく、共有のスタンス
評価
- 「これが正解だった」
- 「あれは間違いだった」
- 「もっとこうすべきだった」
共有
- 「自分だったら、こうしてたと思う」
- 「でも、あなたはこうしたよね。なぜ?」
- 「その考え方、面白いね」
共有のスタンスで話すことで、お互いに学び合えます。
第24話「コミュニケーション術:最強ペアの作り方」で学んだように、良いコミュニケーションは、評価ではなく、対話です。
質問の例
試合後、こんな質問をしてみましょう。
- 「あの場面、どう考えてた?」
- 「あのショット選択、理由は何だった?」
- 「ピンチの時、どう立て直そうとしてた?」
- 「相手のどこを狙おうとしてた?」
- 「自分では、どこが良くて、どこが悪かったと思う?」
これらの質問で、相手の思考プロセスが分かります。
そして、自分にはない視点を得ることができます。
観戦上手はコーチ上手になる
他人の試合を観る技術は、コーチング力にもつながります。
観察眼=人を見る力
他人の試合を観察する技術は、人を見る力です。
- この人は、どういうプレースタイルか
- この人は、どういう思考パターンか
- この人は、ピンチの時、どう反応するか
これが分かると、的確なアドバイスができます。
具体例:後輩へのアドバイス
後輩が試合で負けた
観察していない場合
「もっと練習しないとダメだよ」
「フォアハンド、もっと強く打たないと」
これは、抽象的で、役に立ちません。
観察していた場合
「あの第3ゲーム、相手のバックが弱いって気づいてた?もっとバック側に打てば、もっとチャンスが増えてたと思うよ」
「ミスした後、次のポイントで焦ってる感じがした。ポイント間で、深呼吸してリセットする習慣をつけるといいよ」
これは、具体的で、すぐに実践できます。
観察眼があると、的確なアドバイスができます。
他者分析は指導・ペア練・試合戦略にも応用できる
他人を観察する技術は、様々な場面で役立ちます。
応用例①:ダブルスのペア選び
「この人と組んだら、どんなペアになるだろう?」
- この人は、攻撃的なプレーヤー
- 自分は、守備的なプレーヤー
- 相性が良さそう
第25話「MBTI×ダブルス:性格タイプ別ペアリング戦略」で学んだように、ペアの相性は重要です。他人を観察することで、相性の良いペアを見つけられます。
応用例②:対戦相手の分析
「次の試合の相手、どんなプレーヤーだろう?」
練習試合や他の試合を観察していれば、事前に分析できます。
- この人は、バックハンドが弱い
- この人は、ドロップショットが得意
- この人は、ピンチの時、焦りやすい
第18話「格上に勝つための5つの心理戦術」で学んだように、相手の弱点を知ることが、勝利の鍵です。
応用例③:練習メニューの提案
「今日、何を練習しようか?」
仲間の試合を観察していれば、的確な提案ができます。
「さっきの試合、クロスラリーが安定してなかったよね。今日は、クロスラリーを重点的にやろうよ」
「ドロップショットのミスが多かったね。ドロップショットの練習、少しやってみる?」
このように、観察眼があると、効果的な練習ができます。
第30話「MBTI×シングルス練習法」で学んだように、性格タイプに合った練習法を提案することもできます。
他人を観ることで、自分が見える
練習仲間の試合を観ることは、自分のテニスを客観視することです。
他人のプレーを観察しながら、「自分だったら、どうするか?」を考える。
これが、最高の学びになります。
なぜなら、自分にはない視点を得ることができるからです。
- 「こういう選択肢もあるんだ」
- 「こういう考え方もあるんだ」
- 「こういう反応もあるんだ」
この気づきが、自分のテニスの幅を広げます。
今週末、練習仲間の試合を観てみましょう。
そして、試合後に話しかけてみましょう。
「あの場面、どう考えてた?」
この一言が、あなたのテニスを変えます。
次回は、「対戦相手の観察術」について解説します。
試合前に相手を観察することで、試合が有利に進められます。お楽しみに!


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